日本AM学会第1回セミナー・情報交換会を東京神田にて開催しました。
2025年5月20日、日本AM学会として初のセミナーを東京神田にて開催しました。会場参加は141名、オンライン参加は130名にのぼり、多くの方の期待と注目の中、セミナーがスタートしました。
まず、日本AM学会会長である中野 由貴 大阪大学教授より開会のあいさつがあり、今回のセミナー趣旨を「AM×最先端技術(宇宙・自動車・医療)」とした経緯や、4月にAM研究会からAM学会になったことにより、教育講座、学会誌【AMフューチャー】などの取り組みを始めたことに触れ、国の戦略としてもAM技術に注目が集まり、中学教育で3Dプリンターが導入されることになった報道などの紹介をしました。これからAM技術がすべての領域で活用されることを期待し、関係者一丸となって日本におけるAM技術を育てていきたいとの思いであいさつを締め括りました。




特別講演ではJAXA安全・信頼性推進部ミッション保証技術グループ 技術領域主幹の境野 正法氏と、文部科学省 研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐 池田 宗太郎氏による「宇宙分野におけるAM技術の活用等について」のご講演いただきました。近年、AM技術が航空宇宙領域で注目され、開発に導入されていることや、高温、振動、真空、温度差などの複数の環境条件に耐えることのできる素材において課題があることをはじめ、軽量化、高機能化、低コスト化、製造効率化について、AM技術の発展が重要であることをお話いただきました。実用例として、スペースデブリの影響評価のほか、無重力でのAM技術開発も求められていると述べられました。


続いての特別講演では「AMによるモビリティ部品製造に必要な要素技術」というテーマで株式会社デンソー先進プロセス研究部ADM研究室次長 寺 亮之介氏にお話しいただきました。AM技術の普及のカギとなるのはモビリティ部品であるとし、型レス、機能最適設計、複数部品の一体化などにおいてAM技術のポテンシャルを述べられました。また、原料の状態を安定させる原理がないことなどの課題をあげながら、デジタルツインの活用などの広がる可能性について話されました。


ベルランド総合病院 副院長・総合整形外科部長・ハンドセンター長、大阪大学招聘教授 村瀬 剛氏による特別講演「整形外科領域におけるAM臨床応用~上肢変形矯正を中心に~」では、顕著な増加傾向にある整形外科におけるAM応用についてお話しいただき、骨加工のためにネジ穴の手術時にガイドや骨接合プレートのAM技術によるカスタムメイドの実例について、ご紹介いただきました。


次に株式会社OUI代表取締役、慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師 清水 映輔氏の特別講演「AMの眼科応用、世界の失明を50%減らす医療機器の開発」では、世界中には22億人の眼疾患患者がおり、440万人の失明患者がいること、そして、50%が予防可能であることに触れながら、眼科医としてベトナムに派遣された際に、眼科診察機器がないことからスマホのライトを使って診察を行った経緯から、今やだれでも保持しているスマホにAM技術で制作したアタッチメントをつけることでライトと診断ツールとして使える診察機器について紹介しました。ベンチャー企業の立ち上げや、現在、33カ国で利用され、遠隔治療にも貢献しているツールであることのほか、それぞれのスマホの仕様に合わせて設計できることはAM技術の強みであり、世界の目の病気を予防するツールであること、さらに進化する可能性があることを述べられました。


最後に前川 篤日本AM学会副会長より、閉会のあいさつがあり、9月に開催される講演大会への積極的な参加を呼びかけました。


2部の交流会では93名が参加し、講演者をはじめ、多くの企業間での名刺交換が行われ、和やかな雰囲気の中、情報交換が活発に行われました。




次回は東京浜松町にて、第一回目となるAM学会の講演大会が9月1日から3日まで開催されます。講演大会の詳細と申し込みは6月16日に公開となります。追って本ウェブサイトでお知らせいたします。





